今回、天女降臨を The Advent of Celestial Maidens と英訳したのだが、a Celestial Maiden ではなく Celestial Maidens と複数形になっているのは、地球に降臨した天女はかぐや姫だけでなく、メソポタミアのイシュタル、ギリシャのアルテミス、エジプトのイシスなどもみな、銀河連邦評議会が派遣した調査隊員であって、しかもその女性たちはしばしば、地球の男となんらかのトラブルを起こし、宇宙人とはいえ、同じホモ・サピエンスの、生身の人間であるから、理性で自己を律し得なかった。
そうした先輩たちを知っていたために、かぐや姫こと氷室加奈子は、地球の男を支配しようともし、己を律しようともし、先人らと同じ轍を踏まぬよう警戒していた、というプロットになっているのである。加奈子に対する卓也の執着と妄想は異常なようで実は彼はそれなりに彼女の本性が見えていた、と、そういうふうに読むことも可能であり、単なるよくいるストーカーだと見ることも可能だ、という設定になっている。どう解釈するかは読者に委ねられている。
この小説はしかし、天女降臨というタイトルがいかにも陳腐だし、主人公がかぐや姫という設定もいかにもありがちだし、その上、話が長すぎて、誰もまともに読んではいないと思う。またこういうジュヴナイルものというか、ラノベ的なものは世の中に溢れかえっているので、わざわざこんなめんどくさい話を読む人などいないのだろうと思う。
イシスは地球人オシリスと許されぬ恋に落ち、ホルスを産む。
イシスは地球を去ることになりホルスを連れて行こうとするがオシリスはホルスを隠してしまう。オシリスはホルスを川に流したと嘘を付き、逆上したイシスはオシリスを殺してしまう。オシリスを殺すのは神話ではオシリスとイシスの弟セトということになっている。オシリスを殺したセトを殺したホルスがエジプトの初代の王となる。
地球調査員にすぎなかったイシスはそうした重く深い業を抱えたまま、死んだ後もその自我はクラウドの中に溶けてなくなってしまいそうになりながら、なお存在し続けていた。イシスは加奈子の未来なのだ、という話。
いつものようにラノベのようなジュヴナイルのような話を書こうとして全然違う話になってしまった。