ルバイヤート試訳

目覚めよ!空の羊飼いたる太陽が、
星々を天頂の囲いへ追い込み、
その力強い腕を振るって闇を払い、
燃える瞳から光を撒き散らしているのだから。

天空の青き器に朝の酒が満たされて、
雲の切れ端や薔薇の花びらが、その中に浮かぶ。
乾いた大地は、その器から朝を飲み干す。
果てしなき虚空を壁とし、星々の輝きに縁取られた器から。

さあ、朝が来た! あけ明星みょうじょうのごとく
遥か彼方の王宮で輝いているのは、
それは夢の続き、寝覚めの幻などではない、
それは宝玉の車を馭し、真昼を支配する王の青き瞳だ。

目覚めよ、わが魂よ、そしてただちに酒を飲め。
たちまちにして昇るこの太陽も、あっという間に沈んでしまう。
さあ、さあ、寝ぼけまなこの酒場の亭主よ、その戸を開けよ。
我らは泉のほとりで、渇きに死のうとしているのだ。

他に居場所もない哀れな男たち。
我らは早々とこの酒場にやって来た。
薄暗い夜明け前からずっとここで待ち続け、
ただひたすらに、その日が明けるのを待っている。

愛も無く、金も無く、誉れも無い。
我らには何もない。名前さえも。
あるのはただ酒だけ。だがそれで十分だ。
ただ酒があるだけで我らは幸せだ。

若さは魔法の鳥のように飛び去った。
その鳥は、五月の朝のひととき、
彼の愛する薔薇に向かって歌ったが、その薔薇もまた消え失せた。
あなたにも私にもその行方はわからない。

我らを蔑みの目で見るお前よ、お前は我らを
朝から朝まで夢に酔いしれる哀れな酔っ払いども、
衣服は汚れ、名声は失われた者ども、
ただの葡萄粒や麦粒に過ぎぬ心の持ち主どもよと思っているのか。

御魂みたま宿れる さかづき御酒みきを満たして 飲み干さば
死すべき身さへ 神となる
土に生ひたる 百種ももくさの いかなる枝に 成れる実よりも
恐ろしくまた 妙なる実から 醸せる御酒を 我らは求む

杯は 白銀しろがねの 小さき泉、
そこは真実まことが、もしもこの世に 真実あらば 、そこにこそ 宿れかし。
死も またそこにあり。死を求めざる 者はあらめや。
そしてまた 愛もそこにある。天国でもあり地獄でもある愛が。

杯は思ひ出を呼び覚ますくすしき器。
その中にはひねもす、懐かしき顔が微笑みては過ぎ去り、
そのふちに口づければ亡き人の唇が我らの唇に触れ、
ありし日の声が、甘く「ああ」とささやく。

まどろむ昼のひととき、
あたりは静まり返り、夢うつつの心地にあるとき、
ふと誰かが、驚きに輝く顔を上げる、
聞け!かの鳥の調べを、あやしき呼び声を。

酔ひどれめだと? ああそうさ、我らは。だが賢き者ならば誰しも、
我らと同じく、夢見る瞳で酔いしれているだろう。
哀れなるしらふの世界よ、ひねもす憂ひに沈む者らよ、
寺も捨て、市場も捨てて、我らの楽園に加はれ。

酒に癒せぬ 憂ひはあらじ
洗い流せぬ 罪もなく
解き明かし得ぬ 謎もなく
あがなひ切れぬ 借り金もなし

女を忘れたければ 酒を飲め
忘れたくなくとも 酒を飲め
女の顔を見るだけで胸が張り裂けそうになるのか
では酒という鏡の奥底を覗いてみよ。

我が胸を酒の酔ひで満たしてくれるのならば
この世が滅びてもかまわぬ
ああ、滅びゆく王国よ、忘れ去られし王たちよ。
私はもっと良い王国を知っている。酒だ。

雲が湧き、草木の上に激しく涙をこぼした。
さあ、琴の調べを聴きながら、ただひたすら酒を飲もう。
今日、我らが憩ふこの芝生が
やがて我らがかばねの上で涙を流すだろう。

酒の輝きはあまりにもまばゆく
闇の中にありてなほ光を放つ
ニワトリも時を告げる、夜明けとみまがふほどの
その神々しき光に。

一杯ひとつきの、目覚めの朝の くれなゐの酒、
曙光にまがふこの輝かしき酒のなかりせば、世界はあまりにも寂しい
いや、この酒こそはまことの朝、他に朝などありえない。
酒は私がこの世に生まれ出でる幸福な朝だ。

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