最後の推敲

本を書いているということ、本が出版されることを心待ちにしているということが、私の人生の、それ以外のものごとすべてをつまらなくしている一番の要因、少なくとも要因の一つであるのは確かだと思う。本を書くことに比べるとそれ以外のことにはもう慣れてしまい飽きてしまい疲れてしまった。

昔は新宿の雑踏の中を歩くことすらワクワクして楽しさを感じていた。渋谷でJRから東横線に乗り換えたり、目黒で目蒲線に乗り換えることさえ楽しかったが、今はただ面倒なだけだ。

とにかく都会を歩き回ることが厭で仕方ない。人と何かの接触をしなくてはならないことがストレスにしかならない。

同じ仕事を30年間続けることがこんなに苦痛だとは思わなかった。私の同僚たちは定年退職した後もなんらかの形で続けたがっている人しかいないのだが、私には信じられない。もう私は飽き飽きした。

本を書くことも次に、今私の関心事の二番目は定年退職後死ぬまでの時間をどうやって暇つぶしするかということだ。これは本を書くということとかなり密接な関係がある。本を書いてさえいればたぶん気は紛れる。

今回の本が売れなければもうどうしようもない。売れなくても注目されることはあるかもしれない。そのどちらもないのに書き続けるのはバカげている。そこまでして私はこの世に奉仕したいのではない。

本を書く気はまだまだあるがもう本を書くことはなくなるかもしれない。それが怖いので今は最後の推敲に励んでいるといえる。ますます他の仕事がばかばかしくなる。

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